城西大学水田美術館(埼玉坂戸キャンパス)では、2023年10月13日(金)まで「煌めきの日本近代洋画展—糖業協会コレクションで出会う名品—」を開催しました。
これにあわせて、渡邉郁夫氏(有限会社修復研究所21所長、東海大学非常勤講師)をお迎えして講演会「修復家から見た日本近代洋画の魅力」を9月16日(土)に開催しました。水田三喜男記念館講堂での会場参加とオンライン参加(Zoom)を併用しての開催です。
講演は最初に油絵を描くための用具や下準備の工程から絵画の構造を解説、それを踏まえて損傷した絵画と修復例を具体例を紹介しながら修復の実際を語られました。黒田清輝の外光派に対して黄褐色に見えることで脂(やに)派とも呼ばれた高橋由一の絵が変色したワニスを除去したことで明るく鮮やかな色彩が現れたこと、2度のダメージにあった高島野十郎の絵画が堅牢な絵画作品であったことで甦ることが出来たこと、修復過程で分かった藤田嗣治作品の描き方と鑑賞の視点など、修復家ならではの日本近代洋画の魅力を90分お話されました。最後に伝統技法にとらわれない現代絵画作品の修復課題にも言及され、講演を終えました。
講師:渡邉郁夫(わたなべ いくお)略歴
1960年千葉県生まれ。東海大学教養学部芸術学科卒業。創形美術学校造形科修了。1987年~学校法人高澤学園創形美術学校修復研究所研究員(現、修復研究所21)。2014年~同研究所所長。1996~1997年、文化庁在外研修 (ドイツ、ベルリン美術館群ラトゲン研究所およびプロイセン城郭庭園財団)。2010年、プロイセン城郭庭園財団サンスーシ宮殿絵画修復工房客員研究員。1998~2003年、東京藝術大学威尼斯赌博游戏_澳门威尼斯赌场文化財保存学保存修復(油画)研究室非常勤講師。2005年~東海大学非常勤講師として古典技法と絵画組成論を担当。朝日カルチャーセンターにてフランドル絵画の摸写と表現の教室を担当。2016年、文化財保存修復学会業績賞受賞。2010年、グループ展『古典技法研究会第1回摸写展』(NORTON GALLERY)以降 同展に毎回出品