MESSAGE
教員のご挨拶
最近の薬学部の様子(教員からの大学?学部紹介)
教育のキーワードは「連携」、「協働」、そして「協創」
- 城西大学 学長補佐
- 教務部長 教授
上田 秀雄
薬学部15期生の上田秀雄と申します。薬友会会員の皆様には、日頃より薬友会の活動にご理解ご協力をいただき誠にありがとうございます。
2000年4月に助手として城西大学薬学部に着任以来、四半世紀の時間が経ちました。2023年4月に城西大学教務部長の任を受け、2024年度からは学長補佐という立場からも全学的な教育活動に携わっています。これまで、様々な活動を通じて他学部の先生方や学生たちと知り合う機会があったことが、薬学科の特徴ある教育に結びついているという感覚があり、全学の取り組みにも生かせるのではないかと思っています。これまで私が経験してきたことをなぞりながら、今の城西大学の教育の一部を紹介させていただきます。
薬剤師養成課程が6年制になり、医療人としてのふるまいや生活者に寄り添う姿勢、多職種で連携する力、それらをベースに薬剤師としての実践ができる資質?能力の醸成が求められるようになりました。ちょうどそのころ、大学では「城西健康市民大学」という地域住民の健康づくりのためのコミュニティカレッジが開校し、私はその運営に携わる機会を得ました。城西大学には、駅伝部をはじめとする運動に関する知識や実践に長けた指導者が豊富で、薬学部には薬や栄養を専門とする教授陣が揃っているので、そのメリットを生かした地域貢献活動の一つです。学部?学科の垣根を超えて、学内の多くの教職員と連携し、協働する機会を得たわけです。そんな中、文系学部のゼミ活動に触れることもできました。薬学部の研究室配属とは違ったもので、私にとってはとても新鮮なものでした。ゼミ活動では、担当する先生のテーマやプロジェクトについて、授業時間割で決められた時間に議論したり活動したりします。もちろんその時間だけでは十分な活動はできないので、学生たちは授業時間外の時間を使って準備をして、プロジェクトが円滑に進むように活動していました。そのような活動を通じて学生たちが成長していく姿を目の当たりにし、薬学科でもこのような授業の要素を取り入れることができないかと考えていました。
2015年度入学生より施行された改訂コアカリに対応するカリキュラム改正がなされた際、4年生の必修科目として「コミュニケーション体験演習」という科目が置かれました。開講前年度になって、井上裕教授と私が内容の検討と実施を任され「さてどうしよう?」ということになったわけです。そこで、心の中で温めていた薬学科版ゼミ活動をやろうということを提案しました。地域や学内の課題解決をプロジェクトとし、約200名の学生を10個程度のプロジェクトに割り振り、プロジェクト基盤型教育として実施しました。もちろん教員2人で実施することは不可能で、経済学部で地域課題解決をテーマとしていた勝浦信幸教授、薬学科内からは10名程度の先生に協力していただき実施にこぎつけました。2024年度現在は、10名の薬学科教員が正式な担当者となり、さらに4,5名程度の教員からの協力も受け、特徴的な科目として継続しています。プロジェクトを通じて地域の人たちや教職員と協働することにより、学生たちの関心が広がり、学生間のコミュニケーションと連帯感が促進され、教員との距離感もよくなっているように思います。うまく言葉で表現できませんが、よい意味で“城西らしさ”を醸成できているのではないかと思っています。
「競争から協創へ。育ちあう大学」という大学のキャッチコピーにあるように、2024年度入学生から全学的なディプロマ?ポリシー(学位授与の方針)の一つに『協創』という言葉が明文化されています。「多様な人々の言葉に耳を傾け、自分の考えを伝えながら交流することによってお互いを理解し、尊重し、皆と協力して新しい価値を創り出していこうとする力」を協創力と定義し、城西大学に入学した学生全員にそのような力を身につけて卒業してもらいたいということです。そのための新たな授業として協創力育成科目が置かれました。全学の新入生約1500名が23クラスに分かれ、基本的にはすべての学部?学科の学生が混合してグループディスカッションや活動を行っていきます。教務部の任務の一つとして協創力育成科目(上位学年まで全3科目)を創り上げていくということがあり、教職員も協創しながら進めています。その成果が現れるのはまだ先ですが、また紹介できる機会があればと思います。
世の中で「コラボ」という言葉が用いられるようになって久しいですが、その本質として大切なのは連携する力、協働する力です。不確実なことが多い世の中では、それをさらに発展させて「協創」できる力を身につけることは大きなアドバンテージになるのではないかと思います。これからの城西大学の教育にご期待いただくとともに、このような特徴的な教育を行っている母校をこれからもぜひご支援をお願い申し上げます。