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教員のご挨拶

最近の薬学部の様子(教員からの大学?学部紹介)

「協創力」を育む ―城西大学における新しい教育―

  • 学校法人 城西大学理事長
  • 城西大学学長

藤野 陽三

私学の教育を考える上で原点とするべきは建学の精神だと思います。皆さんもご存じの、城西大学の建学の精神は「学問による人間形成」です。学びを通じて人を作る(育てる)ということと理解しています。

 

私が、はじめて本学の建学の精神に触れたとき考えたことは、「どのような人を育てることをイメージするべきか?」ということでした。創立者の水田三喜男先生が残された書き物には、社会で信頼される人、社会に貢献する人などという言葉は出てくるのですが、やや抽象的だと感じました。時代とともに、必要とされる人物像も変わるので、水田先生も敢えて具体的には記さなかったのかもしれません。

 

2020年4月に学長に就任して以来、「どのような人を育てるのか」という問いに答えることが私の学長としての務めだとの思いがあり、頭の中の片隅にこの問いが常にありました。

 

私の専門が橋で、その関係で縁の深い首都高速道路株式会社から送られてきた2020年秋の季刊広報誌(特集「グローバル人材の育成」)を、年の暮れにパラパラと読んでいましたら、立教大学教授の池田伸子さんの書かれた「育てたいのは“ユニバーサル人材”」というエッセイが目にとまりました。ユニバーサル人材に必要な力には2つあり、一つが「協創できる力」であり、もう一つが「道がなくても前に進める力」であると書かれていました。
私は、先が見えにくくなる時代の中で「道がなくても前に進める力」も大切という先生の主張に大いに賛同しますが、それよりも前者の「協創できる力」が、城西大学が総合大学であるがゆえに、目指す教育に相応しいとその場で思いました。

 

インターネットによって情報があっという間に全地球に伝わる今、国を超えた「競争」が激しくなり、人々の間に格差や分断が生まれています。しかし、人類が直面している環境問題や貧富の格差は、「競争」では解決できません。すべての人が協力して新しいアイディを生み出し、協働して対処しない限り、解決できないのです。「競争」して勝つことより、 持続可能な社会を協力して創りあげる「協創」の精神が、 今後ますます求められることは間違いないと思ったからです。

 

「協創力」という言葉を学内の教職員の前で、紹介したところ、反応がよいことを実感しました。

 

2021年度に入ってすぐに、「競争から協創に」という語呂合わせの表題とした A4一枚のパンフを作り、学生にも、高校生にも配りました。そこには、城西大学の建学の精神「学問による人間形成」は、21世紀においては「学びの中から協創できる人間を育むこと」であり、 これを実現するために城西大学は大きく変わろうとしています。と記しました。入学式の祝辞でもいつも「協創力」に触れるようにしました。

 

なお、城西大学における協創力の定義は、「多様な人々の言葉に耳を傾け、自分の考えを伝えながら交流することによってお互いを理解し、尊重し、皆と協力して新しい価値を創り出していこうとする力」としています。

 

2022年夏には、大学の3ポリシー(学位、教育、入学者)の改訂に取り掛かり、学位授与の方針の中に、「協創力」を入れ、全学部学科研究科の3ポリシーも統一的なものにし、2022年暮れにはほぼ完成させました。
建学の精神「学問による人間形成」の一つとしての協創力が3ポリシーに入った以上、その協創力の養成を行う授業を教育課程の中に具体的に設置することが必要です。その授業は、この2024年4月から、画期的な演習形式で始まりました。1年生全員必修の「協創力体験演習Ⅰ」です。2年生向けの必修授業である「協創力体験演習Ⅱ」は来年から始まり、3年生向けが「協創力実践演習」で、再来年開始です。いずれも105分7回
の1単位の授業です。

 

城西大学は、文系?理系の学部を有する総合大学で、その上、ほぼワンキャンパスです。しかし、学部、学科を越えての学生との交流は少なく、総合大学としてのメリットを活かしきれていないというのが就任当初の私の認識でした。
そこで、「協創力体験演習」は、金曜日の3限をすべて空け、クラスをすべての学部学科の学生から構成されるようにすることにしました。結果的には、1400名ほどの一年生が全22クラスに分かれ、新しく出来た23号館(Josai Hub) の教室での授業が、2024年春学期に行われました(紀尾井町キャンパスでも1クラス実施)。担当する先生20余名は各学部学科から推薦いただきましたが、異なる学部の教員が一つの授業を作り上げていく試みも画期的です。

 

「協創力体験演習Ⅰ」は先生方にとっても初めての経験で、双方向の演習を主体としたものであることは間違いありませんが、どのようなテーマで、どのようなやり方でやるかは、全くの未知の課題でした。2023年の8月から毎月1回(土曜日半日 休日出勤です!)に来ていただいた、みんなで議論して、内容を詰めたのでした。 演習の内容はまた別に機会に紹介するとして、7回の講義は、2週やって3週目は空けるというサイクルを3回繰り返し、最後の1回を「まとめ」としました。その講義が無い週は、先生方は、前回までの演習のふりかえり、次の演習の内容の打ち合わせを教室に集まって行うのです。
ここでも、私は先生方の熱心さに感服しました。

 

履修した1年生からは
?この講義を受ける前までは、対人スキルは経験からや得意不得意で成長はあまり望めないものなのではないかと思っていました。ですが、細分化して一つ一つのポイントを抑えることでここまで変わることが出来るのかと驚かされました。文系理系関係なく、このように考え方、価値観の違う人との交流は社会になってからは当たり前になるので、こういう授業がありがたく感じました
?この授業を通して、コミュニケーションの大切さや、多様性の大切さに気がつけたと思います。学部が違ったり出身が違ったりと様々な人たちとこの授業で会話し多様性を実感し、非常に良い能力が着いたと思います。
など、とてもよい反響が沢山戻ってきました。

 

段取りは、教務課の皆さんがすべてやってくれました。演習の内容は教員の担当であり、薬学の上田秀雄先生(教務部長)が中心となって取りまとめていただき、協創力の3ポリシーへの取り込み、協創力体験演習などの立案などでは薬学の関俊暢教授(図書館長)に多大の協力をいただきました。
40名を越える学部生もSA(studentassistant)と演習を手伝ってくれました。正しく、教員と職員と学生の教職学協働がやれることが実感できたのが、学長である、私にとり最大の喜びです。

 

協創力を養成するこの演習は、来年、再来年には2年次、3年次向けの科目が新たに開講されます。
いろいろ工夫を重ねて、城西大学を代表する科目にしたいと思っております。演習の聴講は可能です。
関心のある方はお申し出ください。同窓生皆様に、新しい城西大学の教育をご理解いただき、様々な形での応援を期待しています。